さて。昨日の続きです。宮島未奈『成瀬は信じた道をいく』(2024年刊読了)。滋賀が生んだスーパーヒロイン成瀬の脱力冒険譚、第二弾です。 基本構成は前作踏襲で、奇才成瀬の周辺の視点でお話が展開されていきます。成瀬ファンの小学生、成瀬の父親、成瀬のバイト先のスーパーにくる客、成瀬と観光大使をやることになった女子大生、で最後は島崎に戻ってくると。微妙に時系列は行ったり来たりしてたし、最後は未来だったな。 前作よりも、成瀬の武士感が高まった気がしました。そう、成瀬は武士なんですよね。スマホを持たず(後半持ったけど)、口調も武士のそれで、タイムスリップものみたい。ああそうか、この小説は成瀬という異分子を通して、その周辺の人々のドラマを描いていたんだな。と今更気づいたのでした。 『不適切にもほどがある』ってドラマ(見てません)もやってますが、日常に異物が入ることで気付かされる、「普通」とされていることの違和感をあぶり出す方式。成瀬が特殊だから成瀬の物語だと思ってたけどそうではなくて、成瀬と触れ合うことで小さな疑問や変化が生まれること、どちらかというと読者はそちら側に感情移入していく作品なんだなと腑に落ちました。 島崎が成瀬に引っ張られて大胆になり、男の子はその真っすぐさに恋をして、みらいちゃんは他人に合わせなくてもいいんだと知り、篠原かれんは映えなくても大丈夫だと思えた。『ダイヤモンドの功罪』って漫画もある意味同じかもな。天才が生み出す不協和音の物語。綾瀬川の内面があまり描かれないのはそういうわけか。こういうフォーマット、上手いですね。 ちと話が脱線してますが、でもやっぱり僕は成瀬のことをもうちょっと知りたいなと思うのでした。彼女が何を考え、何を見ているのか。最後の紅白はちょっとやり過ぎな気もしましたしね。あとお父さん、18年も一緒に暮らしてるのに慣れてなさすぎるだろ。 ぐだぐだ言いましたが、第3弾出たらたぶん読んじゃうと思います。成瀬、ありがとう! よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
「よりみち」をテーマに綴ります。お出かけのような物理的なもの、心持ちのような精神的なもの、たしなみのような文化的なもの、全部ひっくるめての「よりみち」を推奨していきます。よりみちしながら、いきましょう。(ブログタイトルは『暇と退屈の倫理学』より借用。基本方針は、2022年1月1日のポストをご覧ください)