スキップしてメイン コンテンツに移動

感想_成瀬は天下を取りにいく

さて。宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』(2023年刊)読了。滋賀県の中学生、成瀬あかり。走るのは誰よりも速く、頭も切れる。けど、変。徹底的に変。200歳まで生きると豪語し、この夏は閉店が決まった西武大津店に毎日通うと言い出した。成瀬あかりは、どこへ向かうのか!?

どうやら本屋大賞の本命らしい本作。1月に続編も出て、実は去年から同僚に借りたまま眠らせていたのですが周りが感想を語り合っているのについていきたくてようやくページをめくりました。面白かったです。

成瀬は平たくいって変人なのですが、そこは深掘りせずにわりと低体温に進みます。成瀬は何を考えているかよくわからないまま、成瀬を見ている周囲の目線で話は展開。最初は同級生の島崎。次は同じ町に暮らすおじさんのエピソードに移り、いつの間にか成瀬は高校生になって元同級生視点、広島の高校生男子、最後は第三者視点になって終わる。つまり連作短編集でした。

いちばん好きだったのはM1に出るやつと、男子高校生の章で、つまりは青春ぽいやつが好みってことですね。でも全体通して、成瀬の解像度は結局上がらないままで、あんまり成瀬が出ない話もあるし、体温も低いまま。なんとなく消化不良な気持ちでした。サクサク読めるし、つまらないわけではない。でも「かつてなく最高の主人公」という帯のコピーは誇張だろうと思いましたよ。

確かにスペック的にもキャラ的にも奇才であることは確かなんだけど、輪郭だけで中身がわからないもんだから感情移入できなくて。滋賀ローカルふんだんなのはよくわかった。

こんなに話題になるほどかなぁ、なーんてちょっと斜に構えながら本を閉じたのですが、続編を読んで少し感想が変わったのでした。続きはまた明日。

よりみちしながら、いきましょう。滋賀っていいよね。今日も、いい1日を。

コメント

このブログの人気の投稿

感想_チ。―地球の運動について―(第1〜6集)

ラグビーリーグワンはプレーオフへ。残念ながら横浜キヤノンイーグルスは進出ならず。 さて。魚豊『チ。―地球の運動について―』1〜6集読了。天動説が信じられる15世紀ヨーロッパで、地動説を唱える者たちがいた。しかしそれはC教では異端とされ、決して誰かに知られてはならない研究。真理に惹かれ、知性を信じる者たちの、命を賭けた美しき生き様を描き出す!   本屋さんでよく見かけ、マンガ系のランキングで上位に入っていたこちら、めちゃくちゃ面白かったです。主人公と思しき少年が、早々に死ぬ展開で驚きました。地動説を巡る大河ドラマなわけですが、主人公は少年ではなく、「地動説」そのもの、あるいは、「人間の知性」かもしれません。サスペンスでありスペクタクルで、これはめちゃくちゃ続きが気になります。 そしてその中身は名言だらけ。「不正解は無意味を意味しない」「怖い。だが、怖くない人生などその本質を欠く」「僕の命にかえてでも、この感動を生き残らす」「芯から湧き出た苦悩は、煮詰められた挫折は、或いは君の絶望は、希望に転化し得るのだ」「この星は生きるに値する素晴らしい何か」「才能も発展も人生も、いざって時に退いたら終わりだ」「文字は、まるで奇跡ですよ」などなど、哲学的とも言えるものばかり。 10年単位で紡がれるドラマと、これらの名言と繋がっていく中で立ち上がってくるのが、もう一つの主人公とも言えそうな、「文字」そして「本」です。まだ識字率も高くない時代、そして手書きの本しかなかった時代に、言葉を記す文字と本は、浪漫そのものとして存在します。100年、200年前の誰かの言葉が、生き様が、研究が、真理が、言葉によって時を超えて受け継がれること。やがてそれは単なる記録ではなく、「感動」を写し取るものとしてさらに多くの人を巻き込むことになること。 地動説が物語の軸にはありますが、この作品が描こうとしているのは人間の感性や感情の伝播と、その美しさだと思います。科学がテーマなのに、しかしそれを動かすのは、成し遂げるのは、人々の直感と情熱と信念という、論理では表せないものというのが実に面白い! データやロジックの比重が高まるからこそ、アートが斬りこんでくる今の時代をも映し出していますね。 まさに、世界が動き出す、そんなコペルニクス的転回に溢れた傑作。活版印刷が登場してきて、第7集はどうなるんだ!? これ...

相模原camp

さて。キャンプ行ってきました。我が家は道具無しの素人なのでバンガローに宿泊して、ふとんもレンタル。食事類はすべて友人家族におんぶにだっこ。感謝しかありません。 向かったのは相模原のほうの青根キャンプ場というところ。とにかくお天気に恵まれて、夜〜朝こそひんやりしましたが気持ちよくて。バンガローはきれいでエアコンもあったので快適そのもの。 子供達もいろいろ手伝ってくれてお昼はカレーを作り夜はお鍋を作り、翌朝はホットサンド。燻製もあったりどれもこれも美味しくて。自然の中でいただく手作り料理。ベタですが本当に最高ですね。 施設内に大浴場があるのも嬉しいし、川も流れてて釣りや川遊びに興じることも。2日目は近くの宮ヶ瀬湖で遊んで帰りました。とにかく子供たちが楽しそうで、多幸感あふれるキャンプになりました。めでたし。 よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

キャットウォークに見惚れる

さて。ズーラシアに行きました。1年ぶりくらいかしら。子連れで年に数回、動物園や水族館に足を運んでいますが、そんな日々もおそらくあと5年くらいなんだろうなという気持ちで楽しんでいます。 行くたびにちょっとした発見があったりもして、この日はチーターの美しさに見惚れました。こんなに長く見たのは初めてで、その優雅なウォーキングをけっこうサービスしてくれました(これが本当のキャットウォークか!と)。 ちなみに見た目の違いは、チーターは純粋なドットで、ヒョウは黒丸の中に茶色模様、ジャガーはヒョウ柄の中に小さい斑点。少し前にテレビで知っただけですが。 動物園はだいたい17時前には閉園して強制的に終わりになるのも晩ご飯に差し支えなくていいですね。スタッフの人はきっとこの後もお世話がいろいろあるんでしょう。 次はどんな動物と出会えるかな。よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。