さて。凪良ゆう『汝、星のごとく』(2022年刊)読了。小さな瀬戸内の島での出会いは17歳。父が家を出た暁海と、恋多き母に連れられてきた櫂。誰にも言えない孤独と不満を抱えた2人は惹かれ合い結ばれる。時間と距離のすれ違い、母の呪縛、大切な人との別れ。運命に翻弄され、過去という亡霊に取り憑かれた2人がその行く末に見つけたものとは。2023年本屋大賞受賞作。
初めての凪良さん作品、周りの絶賛評に誘われましたが、自分にはそこまでフィットせずでした。展開がドラマチックすぎると思ったし、思わせぶりなセリフが多いけど一つ一つのシーンが深まらない。結果、2人をもうひとつ好きになれませんでした。
選択が常に極限すぎるからかな。理不尽もらい事故に不条理袋小路などなど本人に非のないハードモードの目白押しで同情はするけど自分ごとにはなりにくい。好みでしかないけど、価値観の小さなささくれや、日常の他愛のない湿気にこそ、普遍が露わになるのではと思っている自分がいるので、そこが相容れなかった。
もしも櫂にあの事件がなかったら。暁海の母が昔のままだったら。それでも2人の物語が重なり合っていた、ようには思えなかったのです。境遇以外の2人のつながりが脆弱だったし、櫂の文才も暁海の刺繍センスも、裏付けに欠けていた。あるいはエクストリーム波瀾万丈シーソーゲームをサバイブできたのはこの二人だからこそとも言えるのかもしれないけどね。その絶対性に共感も知性も要らないのかな。
このラストならもはや暁海と北原先生の互助は不要に思えるし、結局のところ櫂の私小説なのだとしたら何を突っ込んでも野暮にしかならないぜ(櫂’s脳内美化フィクションで片づいちゃう)。凪良さんも施設育ちとwikiにあったからこれが事実と言われたら受け入れるしかないものね。15年にわたる恋物語を下敷きに、創作や自立、ヤングケアラーにジェンダーと、色んなエッセンスが入りすぎて本筋がボヤけた感じもしました。ラブストーリーだよねこれ?
結ばれぬ恋としての重みは足りなくて、なんとなくセカチューを思い出しました。男女両A面という意味では冷静と情熱の間か。って例えが昭和臭なので、つまりは歳食ったおじさんのタワゴトですね。令和に求められたある種の通過儀礼であり、時代を超える作品ではない(と思う)けど、その時代を確かに彩った物語として位置付けられそうな気がするのでした。
と言いつつも一気に読めました。偉そうにすみません。よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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