さて。石川俊祐『HELLO,DESIGN 日本人とデザイン』(2019年刊)読了。10年ほど前?から提唱される「デザイン思考」。でも、日本ではその語感から「見た目のデザイン」「クリエイターのためのもの」として誤解されている部分も多い。そこに危機感を持った、ロンドンでデザインを学びデザイナーとして活躍してきた著者が、わかりやすくデザイン思考のイロハを紐解いた一冊。
「デザイン=design」の言葉の意味には、形や意匠を作るという一般的なものの他に、もう少し広義にとらえた「目的のための立案・設計」というものがあります。ものに限らずプロジェクトや組織、生活様式、概念といった無形のものも含まれていて、そのニュアンスが日本だと抜け落ちている気がしますね。著者が危惧しているのもまさにそこで、デザイン思考って本当はこの広義の意味での「設計」を大事にすることだということを、さまざまな事例を用いて優しく説いてくれます。とてもわかりやすく納得感ある。
デザインを「設計」という日本語に置き換えるとしっくりくる気がしますね。目に見えるものであれ、見えないものであれ、そこには目指すべきゴールがあり、そのための土台作りや導線作り、そして見た目の装飾まで、一つひとつを設計することが必要です。ゴールが曖昧だと何でもありになるでしょうし、使う人のことを無視したら不便なものになってしまう。
そこから大事なことは2つあって、まずは「創意工夫」。今あるものより、もっとよくすること。現状の延長線にある改善ではなく、もう少し大きな視点で根本から見直して設計し直すこと。これがデザイン思考の本質だと僕は読み解きました。
もうひとつ必要なことが「問いを立てること。課題を見つけること」です。これからは問いを立てる力が重要というのは数年前から言われていますが、まさにデザイン思考の文脈でも同じことが述べられていました。今あるものを疑い、もっといい仕組みはないか考える。そのためによく観察すること、インタビューすること、多様な意見を集めることなど、具体的なメソッドが豊富に紹介されていました。
課題を見つけて創意工夫を設計する。この一連の流れがデザイン思考。小難しく聞こえてしまうかもしれませんが、本書を読むと、案外身近なものとして理解できると思います。ビジネスにおいてはここに「持続可能な形で」という超難題もついてまわりますが、まずは身の回りの小さなところでデザイン思考を始めてみるといいのかもしれません。うちだったら、家事と育児の分担とかですかね。。うん、設計しがいあるわ。
本書の最後に、子供たちにデザインの教育をという提案がありましたが、激しく同意です。自ら問いを立て創意工夫する思考を育てて、主体的に人生をデザインできるようになってほしいなと、子供たちを見ていると強く思うのでした。
よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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