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感想_僕は何度でも、きみに初めての恋をする。

ラグビー日本代表、今週末はNZ戦! 楽しみ。

さて。沖田円『僕は何度でも、きみに初めての恋をする。』読了。両親の不仲に悩む高校生のセイは、学校から遠く離れた公園で一人の青年ハナに出会う。不躾にカメラを向けてきたハナは、戸惑うセイをよそに無邪気に話しかけてくる。程なく距離を縮める二人だったが、ハナには1日しか記憶が持たないという秘密があった。

実はこれ2015年に文庫で発売したものが単行本化されたもの。実は実は、僕は2015年当時に読んで、これはあかんと思ったのでした。記憶が持たない設定の物語っていくつかあると思いますが、僕の中では『50回目のファーストキス』と『ガチボーイ』が神作品すぎて、それと比べたら余りにもゆるく幼く感じたのが理由でした。

が、今回もう一度読んでみたら、意外とイケたんですよね。単行本化にあたって加筆修正がなされたせいかもしれないし、僕がこう言うキャラクター文庫と呼ばれる類の物語に慣れたのかもしれないし、はたまた他にも理由があるかもしれません。

もしも、自分が、記憶が1日しか持たなくなったとしたら。それを思うと潰れそうなほどに苦しいです。自分はそれを受け入れられるのか。ハナのように振る舞うことができるのか。想像するだけでも呼吸が浅くなる心持ちになります。人のつながりをつくるものの大部分に、記憶というものは関係していて、それをなくしても誰かと繋がっていられるのか。誰とも繋がらずに生きていけるのか。そこにはハナにしかわからない葛藤と、世界があるんでしょう。僕たちはそれに触れることはできないから、でもそれが壊れてしまわないように、優しく手を差し伸べ、抱き止めるのかな。セイがそうしようと決めたように。

ただ、記憶を維持できないハナが、毎日初見であるセイに惹かれる理由は見当たらないかったかな。ノートに書くだけでどこまで信じ込めるものなのか。理由もなく惹かれるというのはあり得ることだけど、セイの客観評価が少なすぎるんだよね。友達の三浦さんをもう少し働かせても良かったかもしれない。まあ、そんなのは大人戯言で必要ないのかもしれないけれど。

タイトルは、ハナの言葉として読むのが普通でしょうが、むしろこれはセイの誓いであり宣言だったように、今は思えます。毎日初めましてをしよう。何度でも、何度でも。

よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

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