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感想_パレードのシステム

秋の米国旅行に向けてDuolingoというアプリで英会話勉強始めました。

さて。高山羽根子『パレードのシステム』読了。祖父の葬式で見つけた遺品から知った、彼が日本統治時代の台湾で生まれたという事実。それをきっかけに、ひょんなことから知り合いとともに参列することになった台湾の葬儀で、私は美大時代の友人の死と、私たちを含む生と死のシステムについて思いを巡らせる。

高山さん、芥川賞作家ということですが、初めて手に取りました。主人公は新進気鋭のアーティストとして脚光を浴びていて、美大時代の話など、なんとなく興味と多少の知識のある分野なので入りやすかったです。

淡々とお話は進んで、特別ドラマチックな展開があるわけではありません。でも終盤にかけて少しずつ熱を帯びていく展開はお見事。私たちが生まれ、ある種のシステムの中で日常を送り、やがて死を迎えそれもまたシステムの中に回収されていく。全てを飲み込み網羅するようなそのシステムの中で私たちは自らの生をどう捉え、いかにして暮らしていくのか。

細かい言及はないが、主人公は顔をテーマにした作品を作っているらしい。顔というあらゆる人で違う唯一無二のものもまた、顔という概念においては絶対性をなくしシステムに組み込まれうること。その一方で、彼女が亡くした友人は打ち捨てられたミニカーなど無機的なものを使ってオリジナルの作品を作っていたそうだ。最後の瞬間まで。その対比もまたメタファーに富んでいる。

最後まで明らかなテーマ性のようなものも見えにくいし、受け取りやすいメッセージがあるわけでもない。でも、だからこそ、いろいろな余韻と解釈が生まれて、そこに身を委ねる心地よさがある。後半にかけてだんだんと沼にはまるように面白く読んだけれど、言語化して感想を述べるのはとても難しい。し、おそらく読むたびに少しずつ印象を変えるタイプの作品だと思うので、2度3度と読み返したいと思うのでした。

しかし、この本を読みながら、小説って流行らないよな〜と、ふと思ったのですが、それはまた今度。よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

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