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「李禹煥」展という至福(延長戦)


水泳すると異様に体力消耗していることに気づく今日この頃。全身運動ってそういうことか。

さて。2日にわたって感想を書いた「李禹煥」展(前編後編)ですが、そういえば会場には作品名以外のキャプションはありませんでした。なので基本的に自分の五感のみで対峙していたわけです。

で、現地から持ち帰った作品リストと鑑賞ガイド(写真)を読んだら、作家のプロフィルや代表的なシリーズについての解説があって、より理解が深まったので延長戦として追記しておくことにしました。

李禹煥さんは、釜山出身で、幼少時から文学に親しみ、来日後は哲学を学び、やがて美術表現に向かっていったそう。視覚芸術やジャクソン・ポロックなどの影響を受けながら「もの派」としてデビューし、初期の作品を発表していったようです。

僕も感じましたが、「関係」というのは大きなテーマというかモチーフになっていて、素材と素材、物の配置、絵画と余白、余白と空間など、仕掛けはミニマムながら、いろいろなものの関係を多次元的に浮かび上がらせています。「対話」という作品は、絵画の中で描かれた物体同士の関係性が絶妙で、それは展示室との関係さえも生み出していました。宇宙的!

いちばん最後の展示室にあった「対話−ウォールペインティング」ではなんと壁に直接ペイントが施され、そのわずかな絵の具の塊が置かれることで壁の景色が変わり、展示室の空気が変わり、鑑賞者との対話が生まれるというものでした。マインドフルネスでもあるね。

ヨーロッパでも高く評価されるというのはこういうオリエンタルでミニマルな世界観なんでしょうね。直島のほかに、釜山、フランスのアルルにも、李禹煥の個人美術館があるそうですごいことだぜ。なお、ヴェルサイユ宮殿には、中庭にあった「関係項−アーチ」のオリジナル(はるかに大きい)が恒久展示されているようなので、いつか機会があったら観たいものです。

ということで、観れば観るほど、知れば知るほど、その深淵な世界が染み込んでくるのでした。

よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

関連記事:「李禹煥」展という至福(前編)(後編)(延長戦

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