スキップしてメイン コンテンツに移動

Chim↑Pom事変に大いに期待する



パッカブルなスーツを探していますがどこで買うか悩んでいる僕です。

さて。昨日ポストした通り「Chim↑Pom展:ハッピースプリング」に行ってきたのですが、それだけじゃ語りきれなかったので、今日ももう少し感想を述べたいと思います。

美術手帖の4月号がまさにこの個展に合わせた「Chim↑Pom 自由と真実のあくなき探求」特集だったので、予習復習を兼ねて読みました。個展の理解を深めるにとても良かったので、是非セットでお楽しみいただきたく。

彼らの作品は、その表現だけを切り取って語るべきではないのかもしれません。少なくとも自分の目で見ることなく良し悪しを計るべきではないと思いました。なぜこの作品が生まれたのか、どうしてこういう表現なのか、作品に対して自分は何を感じ、また、どうしてそう感じるのか。そこまで想像して初めて彼らを語る資格が持てるように思いました。

誌面を通して、彼らが作品ごとにテーマを深く突き詰め、「Chim↑Pom 会議」なるものを経て、作品化していることを知りました。それらはただラディカルなわけではなく、すべてが必然性ある手法であり、革命でした。少なくとも単なるお騒がせではないし、その程度だったらこんなに長く活動できないし、森美術館で個展も開けないですよね。最たるものは広島のプロジェクトで、彼らはその展示を中止せざるをえなかったにもかかわらず、その後継続的に広島の方々とコミュニケーションを図ることで、作品をより意義あるものに昇華させたようです。その真摯さは胸を打つものがありました。何をやるにしても法律もしっかり確認した上で最も効果的な手法で仕掛けられていて、イメージとは裏腹にとても緻密。

ところで、今回の展示に当たっては、その作品の性格から美術館側との交渉ごとはかなり複雑だったようです。彼らのやりたいことと、営利施設である企業美術館のルールの間での綱引きは、一筋縄ではいかなかったそう。その一端が、スーパーラットのピカチュウバージョンで、肖像権の問題で美術館での展示は見送られた代わりに、サテライトとして虎ノ門の会場で展示されていました(森美術館で予約の上鑑賞できました)。さらに、協賛金に関して今日時点では決裂しているようで改名するんですかーい!詳細はこちらに。(鑑賞時点では改名は反映されてませんでしたが、ショップでTシャツが販売されてました)

この件も含めて、現代社会には、何も考えずにいればやり過ごされるたくさんの問題があって、彼はらそこに光を当て、問題を顕在化し、思考停止を拒否して問いかけてきます。時に炎上するほどの騒ぎになるのも、それが核心をついているからこそで、タブーや境界線を物ともせずに突き進む姿はある種のヒーローのそれだと思いました。だから惹きつけられる。

ということで、「ハッピースプリング」は展示タイトルほど浮かれた内容では全くありませんが、彼らのやってきたことをしっかり体系的に理解できる貴重な機会だと思います。その目線は、個人的な体験からよりスケールの大きな公共性、社会性、時代性へと変容しているように見えました。Chim↑Pomの生み出すものは圧倒的に「今」だと思うので、同時代に生きていることを幸運に思い、というか、今この瞬間をより深く面白く味わわせてくれるものとして、これからの彼らの事件を追いかけていきたいと思うのでした。名付けてChim↑Pom事変(なんだそりゃ)。

よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。あ、あと、エリイと上野千鶴子さんの対談がとても面白かったです。

改名にとどまらず、無人島プロダクションと、ANOMALYでも展覧会が始まっておりました。観に行けるかなー。

コメント

このブログの人気の投稿

相模原camp

さて。キャンプ行ってきました。我が家は道具無しの素人なのでバンガローに宿泊して、ふとんもレンタル。食事類はすべて友人家族におんぶにだっこ。感謝しかありません。 向かったのは相模原のほうの青根キャンプ場というところ。とにかくお天気に恵まれて、夜〜朝こそひんやりしましたが気持ちよくて。バンガローはきれいでエアコンもあったので快適そのもの。 子供達もいろいろ手伝ってくれてお昼はカレーを作り夜はお鍋を作り、翌朝はホットサンド。燻製もあったりどれもこれも美味しくて。自然の中でいただく手作り料理。ベタですが本当に最高ですね。 施設内に大浴場があるのも嬉しいし、川も流れてて釣りや川遊びに興じることも。2日目は近くの宮ヶ瀬湖で遊んで帰りました。とにかく子供たちが楽しそうで、多幸感あふれるキャンプになりました。めでたし。 よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

感想_天気の子

  『天気の子』(2019年公開)鑑賞。異常気象で雨が降り続ける東京に、神津島から家出してきた16歳の帆高。ある日知り合った陽菜というもうすぐ18歳の子は、祈るだけで晴天をもたらす不思議な力を持っていた。ふたりは、その能力を仕事にしはじめて。 前作『君の名は。』がとても面白かったので期待もありつつ、世の評判はけっこう割れていたようで、とても楽しみでした。そして、すっごく楽しめました。 ハリウッドリメイク意識か!?(してほしい!)というくらいのディザスター感、チェイスアクション、そしてジブリなみのファンタジーで、やりすぎ感すらあったと思いますが、やはり真骨頂はジャパニーズ青春エンタテイメント。美しいアニメーション、花火大会の奥行きとかすごいですね。実写にするならぜひ3Dで観たい。 いろんなポイントがあったと思いますが、いちばん感じたのはイノセンスを問われるなぁということ。「君の名は。」以上に、ふたりの主人公の関係に力点が置かれていて、ファンタジーでありながらも真っ直ぐな感情の動きに、思わず涙ぐみました。この真っ直ぐさを受け入れられるか、言い換えると「きれいなものをどこまで信じていられるか」で評価が割れそうな気がしました。 知らぬ間に陽菜を損ない続けていた帆高の自責の念はどれほどだったか。それを思うと、山手線の線路内を走る非現実的にも見えるあのシーンは「ありえない」ほどの想いをちゃんと表現してくれたシークエンスだと感じました。 雨が降り続いた東京は、どこかコロナと共生する今の自分が重なります。どんな苦難があってもそれでも僕たちはそこで生きていくし、物語は続いていく。もちろん去年の段階でそんなことを考えていたはずはなく、それだけ本質をとらえていたということでもあると思います。 天気や生死、運命など、世界にはどうにもならないことがたくさんあるけど、その中でそれぞれに役割を探しながら生きている。大事なのは、ちっぽけな僕たちでも、確かに世界のカタチを変えうる瞬間というのはあるんだということ。須賀のいうとおりそれはただの自惚れ、思い込みかもしれないとしても。 追っ手を振り切って屋上を目指す帆高に、須賀は逃げるなと言った。帆高...

旅を想うだけで楽しい。

軽井沢のハーフマラソンに出てみることにしました。ちょっと楽しみ。 さて。オズマガジントリップの最新号は「春のひとり旅」。気軽に行ける関東近郊を中心にいくつかのエリアが紹介されていて、気候とあわせて旅気分が盛り上がる一冊。 千葉県のいすみ市は、豊かな自然の中で古民家などのお店が集まっていて、穏やかな1日が過ごせる場所。古書の買取と販売を行う上田のバリューブックスさんはいつか行きたいお店。買取を依頼したことがあるだけで訪問のチャンスはまだないけれどいつか必ずですね。 最近仕事でよく静岡には人宿町なるかつての繁華街がリノベーションなどで盛り上がっているとか。それは知らなんだ、次の出張の際には足を伸ばしたい。そして木更津のクルックフィールズには新しい宿泊棟に図書館もできたとなればぜひ再訪しなくては! 真鶴出版にも泊まりたいんだよなぁ!! といった具合で、うわーあそこもここも行きたい!というところの連打です。遠すぎないしニッチすぎないエリアセレクトが嬉しいところ。やっぱり知らないところに行くのはわくわくするし、そこに行くことを想うだけでなんだか元気が出ますね。 やっぱり3年分の我慢というか、縮こまっていた部分がいろいろとあるんだよなぁと、ちょっとずつ思うことが多いですね。旅とか、雑談とか、そういうしばらくぶりの当たり前。 ストレッチするような心持ちで、お出かけを楽しみたいですね。よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。