無事に長男卒園式を迎えることができました。色々と感慨深いのでそれについてはまた今度。
さて。村上春樹『女のいない男たち』再読。2014年刊行の短編集。映画『ドライブ・マイ・カー』(レビューはこちら)の評価が高まるとともに、原作が入っているこちらも急上昇中。映画鑑賞後に読もう読もうと思いながら、ようやく再読しました。文庫の帯は映画仕様になってますね。
映画を観たときには小説の内容はすっかり忘れてしまっていましたが、改めてなるほど映画の原作になっているなと再確認(なんだそりゃ)。ご存知の通り、『ドライブ・マイ・カー』を骨格としつつ、『シェラザード』『木野』の2作も重要なモチーフとして取り入れられています。
しかし、よくこの短編を映画化したなというのが改めての感想で、確かに骨格は原作からスタートしているし、小説にあるセリフも使われている。でも、主人公の家福の生活や仕事ぶりやロケーションは映画独自のものだし、それがあるからこそ180分もの大作になり、結果として小説が描いていた世界を次元の違う豊かな物語として成立させていました。もう一度映画が観たくなる。
映画とは少し離れて、改めて小説としては、どのお話も、大切な女性を何かしらの理由で失う男たちの話です。死であったり、離婚であったり、あるいはただただ選択としての別れであったり。村上さんの作品は大抵どれも大切な女性を失っているとは思いますが、この短編集もそこから物語が始まります。それは人生を大きく変えるほどの痛みにもなっていますし、結果として自分と向き合うことにもなる。小説にも映画にもある通り、他人を知ろうと思ったら、自分の中を深く覗き込むしかない。それこそが、村上さんが一貫してメッセージしていることなのかもしれません。
大切なものを失った時に初めて、自分にとって大切なものとは一体何だったのか。なぜそれは失われてしまったのか。失ったことで自分はどうなってしまうのか。そういうことと向き合いうことになる。そこに何が残るとしても(残らないとしても)できればそれを受け入れ、乗り越えることが、人生の大きな意味を占めるということかもしれません。
小説単体としても十分に面白いですが、やはりもう映画とは切り離せない一作になったと思いました。ぜひ両方を行き来しながら楽しんでみてください。
よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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