さて。映画『ルックバック』劇場鑑賞(2024年公開)。チェンソーマンの藤本タツキによる青春マンガのアニメ化。マンガを描くことが大好きな藤野は、引きこもりで同じくマンガ好きの同級生京本と出会う。導かれるように二人で作品をつくり上げついに雑誌連載が決まるが二人は別の道を進むことになり…。
周囲の評判がとても良く、58分という尺もありスキマ時間にサクッと鑑賞。THE青春ジュブナイルという感じでほろ苦なあと味。ネタバレを避けるのがなかなか難しいですが、強烈な感動やわかりやすいメッセージよりも、各シーンの意味を考えてるといろんな点がつながって全体像が浮かび上がる系の良作でした。作画もアニメーションも凄く情感あって良かったな。エンディングの音楽も。
自己愛の強い藤野は自身を責めるが、パラレルワールドがその背中をそっとさすってくれる。あっちの世界線でも京本の運命はおそらく変わらないし、藤野と漫画の距離も多分変わらないことを示唆する。人は出会うべくして出会い、別れるべくして別れるってことなのかもしれない。
背景しか描けなかった京本が、物語を立ち上げ藤野を救うくだりがハイライトで、それは藤野との出会いが背中を押してるし、きっと漫画の力でもあるんだろうな。主役ではないとされる、背景もれっきとしたクリエイティブであり、それを作る人々へのリスペクト。藤野のアシスタント探しでも直接的に言及してましたね。人は一人では生きていけないという普遍へのメッセージもあるのかな。
京都アニメーションの事件をこんな風に直接的に描いたのは驚きで、作者なりの追悼や怒りの意味があったのでしょうか。これを使うのはまだ早過ぎるようにも感じましたがニュースで見るのとは違うインパクトがあったので、風化させない意味でもよかったのかな。そして創作に昇華することで理不尽に負けない決意も示してくれたとも思いました。
4コマ漫画というモチーフも良かったですね。とてもシンプルなフォーマットだけどその最小の物語でさえ人を動かすチカラになりうること。藤野キョウの物語はこれからもまだ続いていく。その原点は学級新聞の片隅の四つの四角にあるし、もしかしたらファーストキスというあの作品にも通じるのかも。
創作は誰かを救うこともあるし、時に誰かを傷つけてしまうこともある。無力感に苛まれることも多いけど、たった1人の感動が得がたい幸福感も与えてくれる。全体のテーマはそういうことだったように思います。
ルックバック。振り向けばそこにあいつがいた。目の前には追いかけたいあの人の背中があった。だから2人でここまで来れたんだよ。オレたちは作品という、ある意味背中で語り続けるんだぜ。藤野サインを背負った京本の背中も、きっと誰かが見ているんだ。
と、いろいろと深読みが止まらないのですが、自分としては本筋のお話をあえて描いていないのが物足りなさにもなっていて、あと30分足してでもメインの方の話も描いてほしかった気持ちがあります。何がメイン?て話にはなりますが、藤野の漫画作りなのか、京野の成長なのか、そういう大きな物語の軸になりそうなもの。わかってます、あえてそういうのを除外しているということは。それでも陽あっての陰であり、太陽あっての月なのかな、と。
よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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