村神様の5打席連発は異常でしたね。3連発で逆転負けくらったときは悲しみに暮れましたが、5打席連発となると話は別! 打たれてよかったよ異次元の記録をありがとう!!
さて。東野圭吾『希望の糸』(2019年刊)読了。自由が丘で喫茶店を営む花塚弥生が殺された。誰に聞いても「どうしてあんないい人が」と言い、捜査一課の松宮たちは手掛かりがつかめない。しかし、思わぬところから真犯人の自供が出た。でも、何かがおかしい。みんなが嘘をついている。もつれた運命の真相とは、はたして。
けっこうボリュームありましたが、いつものように真相を知りたい気持ちに引っ張られてほぼ一気読み。バラバラだった人物が悲しい事件を起点に交差し、もつれていくのは、なんともやりきれないぜ。大きなテーマは子宝と親子関係で、子供に恵まれること、それを失うこと、親を看取ること、親の人生を知ること、いろいろな糸が織りなされています。読む人の立場で、感情移入する人物が変わりそうな気がします。
いつも通り面白かったのですが、最大のテーマになる親子関係の扱いが軽いようにも感じました。ミステリとしての複雑性・意外性を取るために関係者を多くした結果、それぞれの心の動きはちょっと弱くなったきらいが。ある程度はトレードオフにならざるを得ないとしても、体外受精などデリケートなテーマも含まれているし、そもそも親子関係を掘り下げた作品は数多く、名作もたくさんあるだけにね。汐見家の憂鬱、花塚さんの孤独、綿貫夫婦の過去、そして松宮姉弟の運命。どれか一つでも長編分のドラマがあるよ。
その中心にいるべきキーパーソンであり、ある種の被害者とも言える萌奈をもうちょっと輝かせてほしかった気もする。「あたしは、誰かの代わりに生まれたんじゃない」なんてアオリを入れるくらいならなおのこと。そして花塚さんのキャラクターはブレていたように感じて、誰もが「いい人」と呼ぶようには見えなかったかな。きわめつけは、犯人の境遇があまりにも悲しい。ようやくたどり着いた安住の地をこんなふうに奪われてしまうのは、辛すぎるし、その気持ちを動機としてしまうのも苦しかったです。彼女が最後についた嘘はあまりにも重いよ。あんなこと言わせないでほしかったし、もっと別の救いを与えてほしかったよ。あと、別世界線で動く松宮のエピソードも、ちょっと都合がよすぎたように思います。
辛口になってしまいましたが、何を求めるかの違いかもしれません。凡百の小説よりもはるかに面白いと思いますが、東野さんに対する期待値のハードルはもっともっと上なんです、すみません。そしてすっかり松宮くんに代替わりして、加賀シリーズだけど加賀は活躍しなくなっちゃいましたね。
よりみちしながら、いきましょう。ミステリというなかれ(?)。今日も、いい1日を。
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