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アレック・ソス「Gathered Leaves」鑑賞。写真の外部性と内在性。

次男が京急好きすぎて、ハマっ子だなぁと思う今日この頃。

さて。オズマガジン湘南特集に触発されて、というわけではないですが、京急に乗って葉山にお出かけ。お目当は神奈川県立近代美術館の葉山館で開催されている「アレック・ソス Gathered Leaves」という展覧会。アメリカの写真家の個展です。どこかで告知のビジュアルを見て、興味を惹かれました。日本での個展は初だそう。

ミネアポリス生まれで、今もそこを拠点にしながら、アメリカ国内外を旅して撮影をしているドキュメンタリーテイストの作家だそう。過去の作品群が時系列に沿って5つのセクションに分けて展示されていました。アメリカ郊外の寂寥感のあるランドスケープと、そこに暮らす人々のポートレートが中心。1枚1枚がすごく特別とは感じないけれど、集合として観るとアメリカが抱える孤独のようなものが透けて見える気が。

そこに写るのは、一般的に言って決して日の当たる場所でもなければ、注目を集めるような人でもない。でも、確かにそこに生きていて、彼ら彼女らの暮らしがある。名もなきモーテルにも、何の変哲もないカップルにも、それぞれに固有の物語があるということ。その姿に無性に引き込まれます。同じく、何者でもない自分がどこかで共感するのかな。そしてそれは、僕に旅をしているような感傷を与えてくれます。おそらく、僕がする旅行の中では出会えないだろうシーンたち。

展示の最後には最新シリーズの<A Pound of Pictures>が並びます。これは、作家が集めてている名もなき写真たちが、量り売りされていたことに由来するそう。そこでは写真の内容は求められておらず、ただただ質量のみが基準だったということ。果たして、誰でも日常的に写真が撮れる今、写真家の切り取るそれと、素人がおしゃべりするように写すそれの、違いとは何なのか。このシリーズが問いかけてきます。公共性ってことになるのかな。自分の内側にある感性や衝動を表現としてアウトプットしたものと、自分の外で起きたものごとを記録として記憶として取り込むためのものと。どちらに価値があるということではなく。

ところで、この日は次男を抱っこしながらの鑑賞だったので、写真一枚一枚「家が写っているね」「これは川だね、船が見えるね」「この人の腕には絵が描いてあるね」などと言いながら鑑賞しました。見たまんまですが、それをアウトプットしながら観るのはなかなか良いなと思いました。なんというか、変に知識とか印象で語るのではなく、素直に写真と向き合えた感じ。

自分もいろんな写真を撮りたいなと改めて思うのでした。この日はあいにくの雨模様でしたが、葉山もゆっくり散歩したいですね、カメラでも持って。会期は10/10まで。

よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。






 

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