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感想_ムーンライト

JR東日本が、ランダムに行き先を選ぶ「どこかにビューーン!」というサービス始まるそうです。JALもありましたね。使ってみたい。


さて。映画『ムーンライト』(2017年公開)鑑賞。アメリカ南部、シングルマザーの母と暮らすシャロンは周りからイジメの標的とされているところを、ドラッグディーラーのフアンに保護される。彼はシャロンに目をかけるが、シャロンの母はフアンからクスリを買い、やがて薬物中毒に陥るのだった。


アカデミー賞作品賞受賞作で、当時本名視されていた『ララランド』を破ったことで名を馳せた作品。いや、確かに、これは、凄かったわ。ものすごく静かな物語で、説明も、セリフさえも少ないのに、ここまで豊かに語るとはこれぞ映画の本懐!という感じ。


シャロンの幼少期、学生期、そして大人になってからの3つのパートを通して、シャロンの心の中へと潜っていきます。貧困やイジメというバックグラウンドに胸を痛め、寡黙に耐える彼は何を思うのか。壊れていく母と、フアンに救われながらも間接的に母を奪われていることを知ったときの絶望とはいかほどか。そして運命の事件からなにが彼をあれほどまで変えたのか。唯一心を許せたケヴィンとの間にあった感情とは。


これらを台詞ではなく、映像で捉えるのが絶妙です。人物の目を真っ直ぐに捉えたかと思えば、ロングショットで俯瞰したり、言葉で説明しようとすると陳腐ですが、感情に寄り添うカメラワークにぐいぐい惹き込まれる。ごく私的なストーリーが、徐々に他人事ではなくなり、親密なものになっていく神業よ!


自分とシャロンに重なるものはほとんどないのに(もちろん、観る人によって異なる部分です)、愛に飢え、孤独に囚われる彼をなんとか救い出したいと願わずにはいられません。あまりにも変わってしまったシャロンの、唯一変わらなかったこと。その正体は一体何だったのか。愛か、魂か、救済か、希望か、それとも。いつまででも考えていられそうな衝撃の一作。アカデミー賞の名に相応しい作品でした。観ておいてよかった。


わかりやすいエンターテインメントが幅を利かせてますが、やはりこういう体験は捨て難いものです。3つの時代を別々の役者さんが演じているのですが、ポスタービジュアルは3人の顔のコラージュだったこと、今更気付きました。そこもわかりにくくしといたのかな!(違います)


よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

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