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意味を溶かして本当の姿を映し出す。篠田桃紅展より

GWも終わったので、夏休みのことを考え始めた僕です。島にでも行こうかと。

さて。東京オペラシティ アートギャラリーにて開催中の「篠田桃紅展」に行ってきました。篠田さんのことは存じ上げず、写真のメインビジュアルだけ見て、なんとなく心惹かれたので(そしてオペラシティさんのキュレーションが好きなので)、それ以上の情報も入れずに行きましたが、書家であり、抽象画家の方でした。迫力あってよかったです! お名前は、「しのだとうこう」とお読みするのですね。
1913年生まれ、昨年亡くなられたとのことですが、幼少より書を学び、書家として活動しながらやがて文字から抽象へと作風を広げ前衛書家に。そして渡ったNYで抽象画に触れ、さらに世界観が広がったとのことです。展示も、初期のいわゆる「書」から始まり、やがて文字を離れ抽象に移行していく変遷を一気に拝見することができました。

抽象なので、それが意味するところを推し量るのは難しいのですが、でも力強さを感じさせ、観る人を引き込むのだから凄いな、と。書がベースにあるので、墨をメインに、あとは金、銀、朱といった限られた色だけを用いているのが印象的。マーク・ロスコのような抽象画の雰囲気も感じるのですが、やはり色数が少ないのでよりミニマルでクールだなと感じました。

漢字や仮名は、その成り立ちが象形的かと思いますが、篠田さんは文字を解体し、抽象という自由の中で再構築していったように見えました。それは、文字を意味から解き放つことでもあり、その本質にまでさかのぼって新たな形を与える作業のように思ったのでした。例えば「火」であれば、文字が表すのはその形であるところを、彼女はその熱さや色、周囲を温め、あるいは照らし出す、その性質までを捉えようとしたのではないかと。文字にする間にこぼれてしまうものを、拾い集めるような。

それはただ僕が感じただけのことですが、そんな風に想像をかきたてるだけの力強さと、思いを巡らせるための余白がありました。抽象画ともまた違う墨象(水墨による抽象画のことだそう)ならではの味わいと言えそうです。ちょっと飛躍しちゃいますが、目先の意味や効率を時には溶かしてしまって、中長期的な目線での本質を考えるのも大事だよな〜的メッセージにも思えたのでした。

エッセイも評価が高かったそうで、今度何か手に取ってみたいと思います。会期は6/22までなので、ご興味ありましたら是非!

よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。

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