村上春樹さんの小説を読み始めたのは、社会人になってからだったと思います。最初に読んだのは『ダンス・ダンス・ダンス』だった気がしますが定かではありません。
ということでナカムラクニオ・道前宏子著『村上春樹語辞典』読了。ハルキスト御用達で知られる荻窪のカフェ6次元を主宰するお二人による、村上春樹にまつわる言葉をまとめた一冊。2018年刊行です。
作品タイトルから、登場人物、交友関係から、作中に頻出する「あるいは」「やれやれ」「悪くない」といった単語、そして「料理」「音楽」「翻訳」「ランニング」など村上さんを読み解くキーワードまでが辞書形式でまとめられていて、「そうそう」とか「あったな〜」とか「これは知らない」とか、読むと村上作品が読みたくなる本でした。ある程度村上作品を読んでいないと楽しめないかもしれませんが、どうですかね。あえてここから始めて、その後著作を読んで答えあわせしていくような楽しみ方もあるかも。
もっとも興味深かったのは、フランスで村上作品を研究しているというアントナン・ベシュレル教授へのインタビュー。大雑把に切り取ると、村上文学はジブリ的なファンタジーだと言っています。主人公はだいたい孤立したり孤独を抱えながら、物語の中で人間関係を修復したりするところに癒しがある。一方で、筋とは無関係な比喩が放り込まれたり、ポップカルチャー的記号が多用されていたりするから、若い世代にウケると。そして主人公の生活や考え方が西洋的なため、西洋人から見て違和感を感じにくいのだそう。なるほど。
村上作品の評論だったり、海外での評価というのを読んだことがなかったので、とても新鮮でした。ベシュレルさんの指摘はとても納得ができるもので、ジブリと同じかどうかはわからないけれど、大人が耐えうるファンタジーというのはまさしくという感じ。マジックリアリズム的手法と、村上さんならではのユーモアと、音楽にしても文学にしても西洋カルチャーが織り混ざってのあのスタイルなんだなと思いました。なんというか、洒落てますもんね。ジャズやクラシックやアメリカ文学に精通してるって教養を感じちゃうフラグ。
そんなわけで、積ん読していた『騎士団長殺し』は今こそ読むときがきた!と思ったので、手をつけようと思いました。短編は、楽しみを取っておこうとあえて読んでなかったのですが、そろそろ読みどきなのかも。ところで、長編はここのところ5年に1冊ペースなので、ちょうど今年は騎士団長殺しから5年を迎えるので、今年か来年には新作が出るんじゃないかと期待しちゃいますね。
よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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