昨年11〜12月に行われていた千葉市美術館の「非常にはっきりとわからない」展の図録が届きました。アーティストユニット「目【me】」の個展で、僕は鑑賞後大興奮し、しかしいろいろとわからなかったため、図録を注文しました。
図録は今回の展示に限らず、目の過去作品を包括的に振り返る記録集で、論考も充実。サイズ違いの紙を地層的に組み合わせた装丁もすごい。個展がチバニアンにインスパイアされてるとのことなので、これもそうかも?
目という作家は、大掛かりなインスタレーションによるギミックがすごく楽しい、という程度の認識でしたが、はるかにスケールの大きいコンセプトと緻密さを持っていたことがよく分かり、彼らの作品のほんの少ししか観ていないことを強く後悔しました。
その本質は、不確かな現実や認識の再発見。自分たちが観ているもの、知っているものの不確かさを、強烈に知らしめてくれます。今年の夏には東京の空に巨大な顔を浮かべる「まさゆめ」というプロジェクトが登場するので、楽しみすぎる。
★以下、ネタバレレビュー★
千葉市美術館は、2020年7月にリニューアル予定ということで、外観はすでに工事囲いのようなものが。受付を入っても同じ様子で、搬入直後か引っ越し前か、という感じで脚立やら台車やら段ボールやらが散乱しております。
展示室のある7、8階に行くと(僕は7階から)・・・これまた同じ! 搬入直後か、引っ越し前か。普通なら「何これ?」だし、目や現代美術を多少知っている人でも「これが作品!?」という感じ。
何が何やらよくわかりません。もちろんキャプションもありません。奥に進むと、半透明のカーテンで覆われた所があり、なにやらスタッフがごそごそ動いてる。導線を示す養生テープがカーテンの奥にも続いているため、どうやらカーテンはいずれ開かれるらしいと待つこと5分、ご開帳! 奥には素敵な作品がありました。
が、このカーテンどのタイミングで開くのだろう? いつ閉じるのだろう? 30分前に来た人は、開くこと知らずに帰った可能性もあるのかな? 長居できなかったのでその辺はわかりません。
7階の次に8階にエレベーターで移動すると・・・! まさかまさかのまったく同じ! 7階と、まったく同じものがそっくりそのまま展示されているのでした。作品(風のもの)も、台車も、脚立も、段ボールも・・・! これはヤラレタ!
こうなると、自分が載ったエレベーターが本当に動いていたかすらあやしくなる。もしかして動いてなかったのかもしれない。が、7階はミュージアムショップがあり8階にはないので、確かに異なるフロアには移動している。
普段、エレベーターの階数表示を盲目的に信じていますが、8階と書かれたそこが本当に8階かどうかはわからないということに気付かされる。「これはこう」と思い込んでいるけれど、その実態を僕たちはまったく理解していなかった!
さて、同じということはわかったものの、「本当に」同じなのかはわからない! こんなところに台車あったっけ? このダンボールはどうだったろう? そう、見ていたけど、全然見てなかった! 人って目の前にあるもののそのものを見ておらず、ただ印象だけを見ているのですね。わかりやすく体験させられます。
あれ、足場の上に人が寝てるけど…7階にいたっけ?(確認しに戻ったらいた!) しかし、頭部は絶妙に死角にあるので、人なのか、人型の物体なのかわからない。ああ、展示タイトルがいやがおうにもつきまとってきます。ちゃんと、わかるんです。だけど、「はっきりとは」わからないようにできている! 非常に!
ここで起きたことはだいたい以上です。時間が許せば、何回もフロアを行き来して、もっとディテールを検証したいところです。いやいやこれはすごい体験でした。仕掛けはシンプルながら、ホワイトキューブでこれやるのすごい。「オーシャンズ11」のトリック思い出したよね。
しかし、これでは終わりません。そういえば、建物自体の外壁工事っぽいのも作品? 美術館自体が2020年7月にリニューアルすることは本当。さて、どこまでが、作家が仕掛けたこと?
多分、気付けてないもの、見逃しているものたくさんあると思います(見てるようで見えてないもので)。時間経過で変化が起きるということは確定したので、むしろ同じことが繰り返されるのではなく会期中どんどん別のものに変容し続けるかもしれない。けど、それも1度ではわからない。あのカーテンオープンが、7・8階で同時に起きているのだろうか。だとしたら、スタッフは別の人がやってることになるけど、それを自分の目で確かめる術はない!! もう一度行くしか確かめようがない。
ということで、行って楽しく考えて楽しい展示でした。鑑賞者も作品の一部なのかも。
千葉からは以上です。よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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