朝はEテレから始まります。子育て世代あるある。
さて。月瀬まは『君が僕にくれた余命363日』(2022年刊)読了。生まれつき、他人に触れると相手の余命が見える能力を持った高校生の日野は、その能力ゆえ極端に人との関わりを避けるように。しかしクラスメイトの成田花純はそんなことはお構いなし。見たくない花純の余命を見てしまった日野は、数日の間に彼女の余命が1年減っていることに気付く。そんなことは今までなかった。縮まる2人の距離と、横たわる秘密。2人に残された時間ははたして。
寿命が見えるといえばデスノートが思い出されますが、あちらでは脇役だったその能力にフォーカスした作品。もしも相手の余命が見える能力があったとしたらと想像すると。おそらく大半は無関心でいられるような気がしますが、やはり短いものには反応せざるを得ないでしょうね。そして日野のようにやがて他人との関わりを避けるというのは自然な行為のように思えます。
ちょっとネタバレになりますが、本作にはもうひとつの能力が登場します。それが、花純が持つ死を迎えた瞬間に自分の余命を1年渡せるというチカラ。減りゆく花純の余命を前に、日野がどう対応するのか。その謎を軸にある種のカウントダウンによって物語は推進力を得て、ぐいぐいページを送らせます。
最近『余命10年』(映画化決定)など、余命もののヒット作がいくつかありますが、おの「残された日々」という切実さは身に迫るものがありますね。手のひらに情報とサービスが集まる今、生きる実感というか、生身のリアリティをくれるのが、死という題材なのかもしれません。
本作の結末は苦しいもので、別の展開はなかったものだろうかとは思いますが、それゆえに読者へのメッセージを持ち得たとも思います。今を生きることと、利他の精神。他人からの干渉を避けていた日野は生きる喜びを手放していたも同然で、そんな彼は花純によって救われました。きっとこれからの未来にも、辛いことはあるだろうけど、おそらく日野はそれに向き合って生きていけることでしょう。その代償は、運命と呼ぶにはあまりに重いけれど。
後半のできごとはやや強引な感もありますが、主役2人のキャラクターが好感度高くて、彼らのハッピーエンドを願う気持ちで読める一作。設定の男女を入れ替えてもよかったような気がしますがどうでしょうね。別にどっちでもいいのか。予定外に夜更かしして読み切るくらいに面白かったです。
よりみちしながら、いきましょう。今日も、いい1日を。
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